『13歳からの道徳教科書』出版記念の集い

 パイロット版道徳教科書の発売を記念して、「『13歳からの道徳教科書』出版記念の集い」が、2月21日(火)に、東京六本木・ハリウッドホールにて開催されました。
 当日は、今の道徳教育を憂うる約250名の皆様にご参加いただき、熱気あふれる大盛況の会合となりました。

(以下、各登壇者の発言〈要旨〉を紹介)

■主催者代表挨拶                                渡部昇一氏(上智大学名誉教授)

 子供の時にいい話を聞くということは、その後の人生にとってとても重要です。私にも経験があります。大学生となり実家を離れたとき、山形にいる両親に日記を送っていました。その後結婚してアメリカに渡ったときは、日本にいる妻に日記を送っていました。私は、この日記を送るということが、われながら実にいいアイディアだと思っていたんですね。

 
 ところが去年の春頃に書庫を片付けていたら、子供の頃に読んだ古い雑誌が出てきました。そこにはスペインのチェロ奏者カザルスが、お母さんが心配するだろうと思い日記を送ったという話が載っていました。私は完全に忘れていたこの話のとおりのことを実行していたわけです。
 
 『13歳からの道徳教科書』は、単純にいい話を集めています。子供は楽しく読めると思います。ただ、おそらくすぐに忘れるでしょう(笑)。しかし、人生のある場面において、そのいい話の行動原理が、無意識に動かし、助けてくれるであろうと確信しております。

■特別挨拶                                    安倍晋三氏(元内閣総理大臣)

 次に、安倍晋三元総理が登壇され、本書の出版を祝福するとともに道徳教育の重要性を参加者に語りかけました。(以下発言)

 

 法改正の「一丁目一番地」には、道徳教育の充実が掲げられています。つまり、「わが国と郷土を愛し」、文化と伝統を培うとともに、われわれ大人は道徳をきちんと教える責任があるのです。

 

 中東のカタールは、日本の教育を熱心に取り入れています。最初は、成長する中国に倣おうと考えていたのですが、(関係者が)中国を訪れると、食べ物をそのまま捨てたり、列に並ばなかったりと、驚かされた。それが日本に来たら、みんなが整然としていて全然違っていた。それで日本の教育の導入を決めたのですが、まさに庶民の行動が一国の方針を決めたのです。

 

 しっかりとした素地ある教育を今度とも続けていけるのかどうか、日本はいま重大な岐路に立たされており、私も皆様と共に懸命に努めていかなければならないと考えています。

 

■トークセッション~編集委員代表が本書の魅力を語る~

 現在、小学校、中学校の「道徳の時間」は、正式の教科ではありません。そのため、そこで使われている教材に、改正された教育基本法や学習指導要領が、しっかりと反映されているとは言えません。 そこで、道徳の「教科化」への機運を高める、パイロット版(試験的な)道徳教科書を作成することを目的に、平成20年7月に「道徳教育をすすめる有識者の会」は立ち上げられました。

 戦前の道徳教育は、明治23年の教育勅語が基準になり、「修身科」という教科のなかで行われました。戦後、占領軍がその「修身科」を目の敵にして廃止したと思われていますが、それは間違いで、非常に高い評価をしています。 しかし、その後の日本側も含めたやりとりの中で、結論として「修身科」は設置せずに、社会科のなかで一緒にやっていくということに決まります。その後、「道徳の時間」は設置されることになりましたが、日教組を中心とした勢力が、道徳教育そのものをイデオロギー対立の争点にすることで、「教科化」は実現することなく、その状態は今現在まで継続していると言えます。

 今までにない、画期的な本です。掲載している教材は、伝統的でもあり、斬新でもあります。この本で採り上げられている一番古い人物はオトタチバナヒメ(ヤマトタケルの妃)です。一方、イチローやビートたけしも載っています。古くて新しい。これも自慢できることです。 そして一番大事なことは、「元徳」を踏まえているということです。これは「清き明き心」というお言葉で表現できるわけでありますが、それを最も端的に表されているのが天皇・皇后両陛下のお姿です。そのために、「25 橋をかける〈皇后陛下〉」、「35 天皇の祭祀〈渡邊允〉」という教材を載せています。

貝塚:日本の戦後道徳教育で意図的に除外してきたもののなかに「宗教」があります。それを『13歳からの道徳教科書』では、正面から取り上げています。「生命のふしぎ(サムシング・グレート)〈村上和雄〉」や「生命あるすべてのものに―マザー・テレサ」などがそうです。 マザー・テレサは、既存の副読本でもよく採り上げられていますが、その際は、彼女の宗教的な側面を全く除いているため、本当に理解しているとは言えないのではないか、と感じていました。したがって議論が出ることは承知の上で、本教材では、あえて「堕胎」についての箇所を採用しています。今まで避けて通ってきた問題を、議論のど真ん中に置いて、話し合っていこうということです。
丸山:私が強く推薦した教材として「風景開眼〈東山魁夷〉」があります。東山氏が、自然に対する人の生き方というものを大変美しい文章で書いています。中学生には難しいだろうなと思います。しかし、よくわからなくても、そこで感じるもの、感性に訴えるものがあっていいのではないかと考えました。
 もうひとつは、「奇蹟のリンゴ―木村秋則」です。これは無農薬・無肥料でリンゴを栽培するという奇蹟を起こした木村秋則さんのお話です。その情熱や苦闘ぶりを知るにつけて、夢を追い続ける人物として、ぜひ取り上げたいと思いました。
八木:私が特に推薦したものは、先ず「稚心を去る―橋本左内」です。『13歳からの道徳教科書』と銘打った以上は、最初に幼心を絶ち切って、自立していこう、と思わせるものが大事だと考えたのです。 また、「なりたいものになるために―ある小学六年生の作文」は、皆さん、ぜひ声に出して読んでみてください。私は泣けて仕方がないです。ものすごい高い志がこの作文の中に示されています。これを、小学生や中学生のときに知るか知らないかでは、その子のその後が随分と変わるのではないかなと思います。 

 苦労の末に『13歳からの道徳教科書』を世に出すことができました。中学生の道徳教科書に留まらず、国民読本となり、ここに書かれていることが多くの人達の共通の話題になること、それが国民教育としての道徳教育に通じていくのではと考えております。

 

■教育界代表の祝辞~道徳教科化の起爆剤に~               久保井規文(全日本教職員連盟委員長)

 私は、非常に荒れた小学校のクラスを受け持った経験があります。何とかできないかといろいろ試みたのですが、なかなかおさまりをみせませんでした。 ところがある日、暴れん坊の1人が一生懸命本を読んでいるんです。何を読んでいるんだいと尋ねたところ、 「先生、徳川家康ってなかなかいいね」と言うんです。徳川家康の伝記を読んでたんですね。
 そこで私は、歴史上の偉人や、現代活躍している人たちの生き方を書いた本を集めて、クラスに置いておきました。そうすると子供たちがあらそうように読み出し、不思議なことに1、2ヶ月経つうちにクラスが落ち着いてきたんですね。おそらく、具体的な人物の生き方を通して、自分を見つめ直すことができたからではと思っています。 私は、道徳心のない学力は、真の学力とは言えないと考えています。『13歳からの道徳教科書』が、日本の教育を考える転機となることを心から願っております。

 

※他にも『13歳の道徳教科書に期待する各界の声として、以下の方々の挨拶をいただきました。


 衛藤晟一参議院議員

 石井昌浩(一般財団法人日本教育再生機構副理事長)

 岡崎久彦元駐タイ大使

 下村博文衆議院議員・元内閣官房副長官 

 後藤素彦公益社団法人日本青年会議所副会頭 

 桶屋良祐念法眞教教務総長 

 北川治男公益財団法人モラロジー研究所常務理事

 小田村四郎(元拓殖大学総長

 森靖喜(岡山学芸館清秀中学校校長)

 江口克彦(参議院議員)

 山中祥弘学校法人メイ・ウシヤマ学園理事長

 ※発言順