〝心の復興を武器〝として                   『13歳からの道徳教科書』を推薦する

  童門冬二(作家)

昭和2年東京生まれ。歴史作家。東京都庁広報室長、政策室長をへて退職後、作家活動に専念。組織と人間をテーマに時代小説・ノンフィクションの分野に新境地を拓く。おもな著作に『小説上杉鷹山』『小説吉田松陰』(集英社文庫)、『江戸の都市計画』(文春文庫)ほか多数がある。
昭和2年東京生まれ。歴史作家。東京都庁広報室長、政策室長をへて退職後、作家活動に専念。組織と人間をテーマに時代小説・ノンフィクションの分野に新境地を拓く。おもな著作に『小説上杉鷹山』『小説吉田松陰』(集英社文庫)、『江戸の都市計画』(文春文庫)ほか多数がある。

 信頼が生きるためには、人間だれもがコンセンサス(規範)とする「道徳」が必要である。……道徳といっても別に高邁な次元の高いものではない「誰でも身近にできること」で成り立っている。……〝親を大切に兄弟なかよく、年長者を大切にし、その意見に耳をかたむけ、他人をよろこばせることに自分もよろこびを感ずる〝、という誰にでもできるあたりまえのことだった。

 現在の日本のアメリカナイズ的風潮で、道徳や美談が冷遇されている。そういう状況の中で、『13歳からの道徳教科書』(育鵬社)が出版されたのは大きなよろこびだ。とくに「公と私」〈第四部〉と「誰かのために」〈第五部〉の章は私自身の人生信条そのものなのでうれしい。この本が日本人の〝心の再生〝のために、強力な武器になることを信じている。

 

『教育再生』第48号「巻頭言」より ※一部抜粋。全文は参照誌を御覧ください。

『13歳からの道徳教科書』に期待する

桶屋良祐(念法眞教教務総長・金剛寺執事長) 

昭和23(1948)年、富山県富山市生まれ。念法眞教教務総長、金剛寺執事長を兼務。 現在、念法学園理事、全日本仏教会理事、世界連邦日本宗教委員会議長、世界連邦日本仏教徒教議会常任理事、国際仏教興隆協会常務理事、儀礼文化学会理事、日本会議常任理事などを務める。
昭和23(1948)年、富山県富山市生まれ。念法眞教教務総長、金剛寺執事長を兼務。 現在、念法学園理事、全日本仏教会理事、世界連邦日本宗教委員会議長、世界連邦日本仏教徒教議会常任理事、国際仏教興隆協会常務理事、儀礼文化学会理事、日本会議常任理事などを務める。

 昔から「教育は国家百年の大計」と言われ、教育が人をつくり、人が国家をつくり上げてきました。

 今年は明治天皇が崩御されてから百年になります。明治天皇がお示しになられた「教育勅語」は、「世の中のまことの道」を国民に伝え、祖先が築いた教えに従い、国民道徳をしっかり身に付けた立派な日本人になってもらいたいという深い御心の表れです。その内容は、①孝行②友愛③夫婦の和④朋友の信⑤謙遜⑥博愛⑦修学習業⑧知能啓発⑨徳器成就⑩公益世務⑪遵法⑫義勇など、平成の御代にもますます光り輝く普遍的な徳目をお示しになられました。

 昨年の東日本大震災のおり、自衛隊・警察官・消防隊の皆様の献身的な活躍や、多くの国民から寄せられた物心両面にわたる様々な行動も、「一旦緩急アレバ、義勇公ニ奉シ」の「義勇」の精神の発露でしょう。日本人の精神の奥底には先祖から受け継いできた素晴らしい「道徳」という伝統があったのです。

 このような話を聞きました。東日本大震災の発生後、ベトナムから来た一人の記者が、津波で両親を失った被災地の少年を取材した時のことです。記者は、震える少年へ自分のジャンパーを着せました。そして持っていたバナナをその少年へ渡すと、少年はそれを食べずにみんなで分け合う救援物資を分配する場所へ持って行ったというのです。「このバナナは僕一人に頂いたものではない、全ての被災者が頂いたものなのだ」と、条件反射的にそのような行動を取ったに違いありません。そのベトナムの記者は「こういう子供はわがベトナムには決していない」と驚き、報道したのでした。ベトナム人は感動し、「日本人を救え」と大変多くの義援金が日本へ届けられたという話でした。

 この少年の行動こそが、日本の長い歴史の中で培われてきた教育の賜なのです。しかし現代は、物質的な充足を幸せの尺度としてきた結果、精神的な充足へと導くことの出来る人が少なくなりました。心豊かな人格を育てていくことは、教育の大切な目的の一つであります。正しく教えていくことが世の中の為になり、世界を動かす力になることを再認識しました。それが故に、大きな影響力を持つ学校教育を決して疎かにすることはできません。日本の精神文化を受け継いだ人をつくる教育が必要でありましょう。

 国を憂うる多くの先人達は、それぞれの時代でこの誇るべき精神文化を守り、またその時代に合わせた「道徳」を示してきました。このたび発刊される「十三歳からの道徳教科書」が、教育新時代の確かな指針となることでしょう。教育関係者のみならず、一人でも多くの方が手にとって味読され、日本人の精神文化の向上、更には日本国のために大きな力を発揮されることを願ってやみません。

 

『教育再生』第45号「巻頭言」より

 

『13歳からの道徳教科書』刊行を目前にして

丸山敏秋(社団法人倫理研究所理事長) 

昭和28年、東京生まれ。東京教育大学文学部哲学科卒。東京高等針灸柔整専門学校卒。筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程修了、文学博士。日本学術振興会奨励研究員、筑波大学非常勤講師等をへて、現職。日本家庭教育学会常任理事など。
昭和28年、東京生まれ。東京教育大学文学部哲学科卒。東京高等針灸柔整専門学校卒。筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程修了、文学博士。日本学術振興会奨励研究員、筑波大学非常勤講師等をへて、現職。日本家庭教育学会常任理事など。

 道徳とは、人の道である。ヒトが人として他者と調和し、共に善く生きるための筋道である。先人たちの生活体験の中から、そうした道が見出され、伝えられてきた。道徳を踏み行う力は、教えはぐくまれなければけっして発揮されない。

 世の中の秩序を保つには法律があれば事足りる、と考えるのは誤りである。法の基盤に倫理道徳があることを忘れてはならない。法に触れなければ何をやってもかまわない、というわけではないのだ。コンプライアンス(法令遵守)は大事だが、そればかり言い過ぎると道徳軽視という本末転倒に陥ってしまう。

 戦前の日本には、立派な法体系が整い、道徳の根本も「勅語」として国民に明示された。ところが戦後は法体系こそありはするものの、道徳が奪われたままである。公教育の正式教科にもなっていない。だから道徳の教科書がない。特定の価値観を子供に押しつけるのはけしからん、と寝惚けたことを言う人たちが大勢いるからだ。その主張こそ、特定の価値観に基づいたものだと、どうして気づかないのだろう。

       

 「道徳教育をすすめる有識者の会」(代表世話人渡部昇一上智大学名誉教授)が発足したのは平成二十年の十月である。具体的な活動としてパイロット版となる道徳の教科書を作ろう、ということになり、講師を招いてほぼ毎月の勉強会を始めた。翌年の暮れが近づく頃から、実際の作業を行う編集委員会が開かれ、筆者も一員に加わった。

 よい教材さえ集めれば立派に本が出来るさ。―そう考えたのが甘かった。教材を公募したけれども、集まりが悪く、使えそうなものも見当たらない。それより何より、編集方針をどう立てるかで揉めに揉めた。 暗礁に乗りかけたところで、妙案が浮上。現今の「道徳の時間」の学習指導要領にしっかり即したらどうか、と。それで行こうと落着し、書名も決まって、委員の面々は勢いづいた。

 しかし難路はつづく。それぞれに教材にしたい資料を持ち寄り、検討を重ねるのだが、さまざまな意見が飛び交う。ゲラが出てからも検討はつづいた。編集委員会を開くこと、なんと十七回。委員のほんどが皆勤であったのは、熱意の表れにほかならない。

 ようやく刊行が目前となり、安堵する一方で、読者の反応が気になる。厳しい叱正を受けることも覚悟している。まずは誰よりも、十三歳からの青少年に読んで欲しい。世馴れた大人たちよりも、若者たちの反応が知りたい。彼らの心にしみ込んで、「胸中の温気」(二宮尊徳)をはぐくむ題材をいくつかでも提供できたら、本書を世に出した甲斐がある。    

 

『教育再生』第44号「巻頭言」より